Vol.6 宮地の咬合三角に見る治療の難易度(治療計画の重要性4)

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2017.07.03

Vol.6 宮地の咬合三角に見る治療の難易度(治療計画の重要性4)

宮地の咬合三角

今回は、歯の治療の難易度に関するお話です。このテーマは、講演やレクチャーで歯科医師の先生方にお話する内容ですが、インプラントをご検討の患者さまにもぜひ知っていただきたい内容ですので、出来る限り分かり易くご説明したいと思います。

歯の欠損に関する治療は、欠損(無くなった歯)の本数と、対合箇所数(上の歯と下の歯が接触している箇所の数)によって難易度が異なると、歯の欠損に関する権威である宮地建夫先生が提唱されています。

宮地の咬合三角

上の図では、横軸が残っている歯の本数(上下あわせた合計本数)を表し、縦軸が対合箇所数を表しています。全ての歯が残っている人は、上下とも14本、合計28本が残っている歯の本数となるため、横軸一番左の28、縦軸一番上の14(上下14本ずつ、それぞれ接触している状態)が交差する場所に位置します。

ここから、次第に歯が減っていくと、対合箇所数(上の歯と下の歯が接触している箇所の数)が徐々に少なくなっていきます。例えば、ピンクの●の場所では、歯は上下合わせて14本残っているものの、上下の歯が接触する対合箇所数は1となっています。これは、下の歯は全部残っているものの、上の歯は1本しか残っていないケースや、上下とも複数本ずつ歯が残っているものの、あちこちの歯が抜けてしまい、上下の歯が合う位置が1カ所しか残っていないなどのケースなどが考えられます。

このようなケースは、治療の難易度が高い(インプラント治療の難易度が高いのではなく、欠損補綴、すなわち入れ歯治療などを含め、再び噛めるようにすることの難易度が高い)ケースに分類されます。上の図の三角形をご覧いただくと、緑・青・灰に色づけされたゾーンをご確認いただけると思いますが、実は灰に色づけされたゾーンに近づくほど治療が難しくなります(反対に、緑に近づくほど治療の難易度は緩和されます)。

このピンクの●の患者さまのように対合箇所数が1カ所だけの場合、上顎優先の治療計画でご説明したとおり、下顎からの力を、たった1本の上顎の歯で受け止めなければなりません。力が集中する上顎の1本の歯は、やがて力に耐えかね、抜けたり割れたりしてしまいます。

このような際、対合箇所数、すなわち下顎からの力を受け止める上顎の歯を本数を増やすために、入れ歯という選択肢も思い浮かぶかもしれません。しかし、粘膜に対して装着する入れ歯は、どうしても「沈み」が生じてしまい、残った天然歯に負担がかかることは避けられません。

このような場合に有効な手段となるのがインプラント治療です。骨にしっかりと固定するインプラント治療は、動かない状態で回復することができ、残った他の天然歯に負担をかけることなく、上下の歯の対合箇所を増やすことができるのです。

難易度の高い症例であっても、インプラント治療によってしっかりと噛める状態を回復し、患者さまのサクセスフルエイジングを実現する。それが私たちに課せられた使命です。